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1 筋交い部通り抜け

事件現場である屋根裏の一部を忠実に再現したセットによる実証。
これにより波多野冬くんが犯行現場に物理的にたどり着けないことを証明している。
つまり彼は犯行に及ぶことが不可能であり、裁判所の判決を根底から覆す証拠となる。
【争点】
 公判の中で捜査員、鑑識係、消防士が証人として出廷をした。そして現場を捜査した全ての人間は被告人が滞在していた103号室の天井裏から火災発生現場である隣室105号室天井裏へは容易に移動が出来たと証言をしている。そしてその中で一番大柄だった捜査員の体重は80Kgであったことが明らかとなった。
 当初弁護側もこの部分が争点になるとは考えも及ばなかった。103号室から105号室の天井裏を移動する際、筋交いが存在する部分を通り抜けなければならないが、被告人も通り抜けられるものだと思い込まされていた。
 被告人は逮捕拘留時の取り調べにおいて、さらには被告人が現場に赴く実況見分の際にも天井裏に登らせて欲しいと懇願をした。しかし臨場した捜査員は天井裏に上がったこと自体否認している人間を登らせるわけにはいかないと拒否。さらにはこのやりとりを見聞調書への記録、記述を一切残さなかった。
 結果的に起訴後に検察から開示された見聞調書の写真と添付されていた現場見取図の図面しか情報として得ることはなかった。
 冤罪Fileの取材を受ける中でイラストレーターの吉岡氏から素朴な疑問を呈された。それは空間認識が長けている彼だからこその疑問であった。被告人が問題となっている筋交い部分をはたして通り抜けることができるのだろうかと・・・。現場写真と図面だけで判断をしていた素人の我々とは全く違った認識であった。
​ そこで1級建築士の監修のもと、事件現場を再現したセットを製作して、被告人と大柄な捜査員に近い体重の被験者において実証を行った。結果は驚きしかなかった。
1級建築士監修意見書PDF
1級建築士監修意見書
添付資料1-①~⑩PDF
​(警察見分調書写真)
1級建築士監修意見書
添付資料1-⑪~⑫PDF
​(警察見分調書見取図)
1級建築士監修意見書
添付資料2-①~④PDF
​(消防火災報告書)
1級建築士監修意見書
添付資料3(強度計算書)
1級建築士監修意見書
添付資料4(建築基準法)

事件現場再現実証状況説明

 

1、実証日時

 平成28年12月19日午前10時55分頃より

 

2、実証場所

 新潟県小千谷市岩沢976-8

 

3、被験者

 被験者A:波多野 冬

   住所:新潟県長岡市川口牛ヶ島2575-1

   生年月日:昭和43年2月23日生まれ

   体重:(実証前測定時)約102Kg

(実証翌日医療機関で測定時は103Kg 証明書発行済)

 

被験者B:佐藤 和則(会社員)

   住所:新潟県小千谷市岩沢976-8

   生年月日:昭和48年1月29日

   体重:(実証前測定時)約75Kg   

 

4、火災現場再現実験棟監修

  ファースト設計1級建築士 反り目一太

  新潟県十日町市大字四日市町新田397-14

 

5、火災現場再現実験棟製作施工業者

  株式会社水落内装

  新潟県小千谷市大字岩沢2430

 

6、動画及び写真撮影者

  ●● ●●(会社員)

  ■■■■■■■■■■■■■■■■

  生年月日:昭和▲▲年▲▲月▲▲日

 

7、火災現場再現実験棟製作元データ

 平成25年1月16日付 小千谷警察署実況見分調書内写真52、98、99、102、103、104、108、109、110、111、112、113、117、118、121、122及び同調書添付現場見取図第4図及び第5図

 さらには同調書作成者である当時新潟県警小千谷警察署鑑識係酒井氏(現新潟県警与板警察署赴任)に直接電話にて聞き取りを行い、裁判が集結した個別の案件については答えできぬ旨の申出があったものの、現場見取り図の寸法線は計測対象物を指すもと回答をしており、本事件窓口である小千谷警察署刑事課に於いても同様の回答を得ている。

 

 平成25年3月22日付 小千谷消防本部火災報告書内写真25、27、39及び同報告書添付天井裏焼損部平面図及び断面図ならびに出火建物焼損天井裏イメージ図面

 

8、火災現場再現実験等製作寸法

 前項7より明らかとなった寸法をもとに前項4の1級建築士が監修を行い、各部寸法を決定し火災現場再現実験棟(以下実験棟)図面を作成した。

 前項5の施工業者が図面をもとに本件現場を忠実に再現し製作を行った。

 

9、各実証の記録の方法

 1)4箇所定点撮影を行い4分割映像処理して録画記録。

  撮影カメラCH1:仮想103号室側より再現セット全景を撮影

  撮影カメラCH2:仮想105号室側より再現セット全景を撮影

  撮影カメラCH3:仮想105号室側より筋交い中央部を撮影

  撮影カメラCH4:仮想105号室側より垂木部を撮影

 (※同システムは防犯カメラの機材を使用していることにより音声の記録は無い)

 2)家庭用ムービーカメラにて再現セット各部の寸法表示部を撮影した後、仮想105号室側より各実証を動画撮影記録(音声有り)

 3)再現セットの各部寸法撮影、実況見分調書と相応するアングルでの撮影、各実証の記録として写真撮影

 以上、計6台のカメラにより各実証の撮影記録を行った。

 

10、各実証の詳細

 【準備】各記録機材の時計設定を合わせ、実験棟の全景及び各部寸法さらには記録機材の配置等を撮影。 

撮影カメラレイアウト及び各実証図面

 【実証1】
  実験棟において被験者A、被験者Bが通過できそうな場所(実質3箇所)を通り抜けられるかを検証した。尚、被験者Aの通り抜けには薄い肌着及び上半身裸の両方で臨んだ。
  結果被験者A(波多野)は如何なる箇所からの通り抜けは不可能。さらには同実証中に天井ボードを破損させてしまった。(以降天井ボードは破損状態で実証を継続)
  また人間が筋交い部分を通り抜けようとする時の抵抗力では筋交いに亀裂が入ることも認されなかった。(筋交いは現場と同様に中央部分に節があるものを取付けている)
  尚、胴差し下部、間柱の間は被験者Aの身体のサイズには狭すぎる為、この空間での通り抜けはそもそも不可能である。
  被験者B(佐藤)はセット中央、筋交い部分の上を通り抜けが可能であることが判明した。

実証1ムービー映像

実証1定点カメラ(音声なし)

 【実証2】
  実証1の実験棟は警察実況見分調書添付現場見取図第5図を元に製作をしたところ、同調書内の写真との類似性が無いように見える。そこで斜辺部長さ86cmの筋交いを調書内の写真と合わせたとところ84cmとなり、この状態で実証1同様の実験を行った。
  結果は実証1と全く同じく被験者A(波多野)は通り抜けは不可能、被験者B(佐藤)は中央部の筋交い上部を通り抜けた。
  実証1同様に人間が筋交い部を抜けようとした力程度では筋交いに亀裂が入るような事は一切なかった。

実証2ムービー映像

実証2定点カメラ(音声なし)

 【実証3】
  事件現場の筋交い中央部には折損が確認されている。実証1及び2によって人間の力では幅7cm、厚さ2cmもある筋交いに折損が発生する事が無いと断定できる。
  そこであえて筋交いの左から38cm部分を切断し、その状態で実証1の各寸法で同様に実証を行った。尚、被験者から見て再現セット左側と右側は実証1で既に被験者Aは通れず、被験者Bに至っては筋交い中央部上からすり抜けができることが判明しているので被験者A(波多野)のみ筋交い中央部の通り抜けを検証した。
  結果は実証1と同様に、筋交い中央部に亀裂が入っていたとしても、そこを被験者Aがすり抜けることはむりであり、筋交いもそれ以上の破損は認められなかった。仮に筋交いが破損した場合には被験者の身体に突き刺さるなど重篤な怪我を負う恐れもある。
  また切断された筋交い部分を無理やり通り抜けようとすると、上からの荷重で筋交い切断部は根元の取付け部分の遊びにより若干左右でズレが生じることも判明した。これは事件現場と大きく異なる現象であり、人為的な力が筋交いに加わった場合には折損部分には何らかの痕跡が残ると推認される。

実証3ムービー映像

実証3定点カメラ(音声なし)

 【実証4】
  これは実証2の各寸法で実証3のように筋交い中央部左から38cmの部分に亀裂を設けて通り抜けの実証を行った。但し実証3と同じ理由により被験者Aが筋交い中央部より通り抜ける検証のみとした。
  結果は実証3同様に被験者Aが筋交い部分をすり抜ける事は不可能。
  
  付記するに実証4の検証終了後に被験者A(波多野)の上半身を確認及び撮影したところ、筋交いや垂木に接触した部分が赤く腫れあがり、過度な負荷が身体に加わっていたことが確認できる。

実証4ムービー映像

実証4定点カメラ(音声なし)

 【実証5~8】
  実験棟製作にあたり垂木の寸法が不明であった。然しながら現場写真より垂木下面の幅と高さが1:1.5の比率であること、建物を建築する際コストの観点から既製品を多く使うこと、強度計算上4.5cm角の垂木では、積雪時のたわみ許容量を超えることから、常識的に高さ6cm、幅4.5cmの垂木を実証1~4のセットで使用した。
  但し、筋交いの幅7cmというのは現在の建築基準と照らし合わせると幅が2cmも不足していうことが判明した。現場の建物が昭和50年代初頭の建築物であることから、現在の建築基準に適合していない可能性も否定は出来ない。
  そこで実証1~4の再現セットのうち、通り抜け部分に関わる垂木を幅は同じく4.5cmのまま高さだけ6cmから4.5cmに変更して同様の実証を行った。
  但し、被験者Bについては実証1及び2ですり抜けが可能であることが判明しているので、通り抜け部分がさらに広がった実証5~8は全て通り抜けが可能であることから省力する。
  結果一部手を伸ばした時の距離に若干の違いはあったものの、実証5~8は実証1~4と同じとなった。
  尚、実証8において動画や写真では筋交い寸法が86cmと表示がされているが、実際は図面通り84cmであり表示の貼り替え忘れである。

実証5ムービー映像

実証6ムービー映像

実証7ムービー映像

実証8ムービー映像

実証5定点カメラ(音声なし)

実証6定点カメラ(音声なし)

実証7定点カメラ(音声なし)

実証8定点カメラ(音声なし)

11、結論
 被験者A(波多野)は逮捕当時の体重(103Kg)とほぼ変わっていないことから、同人が103号室の点検口から天井裏に入り、筋交い部分をすり抜けて犯行現場である105号室点検口近くの敷梁への放火や天井ボードへの局所的な炭化を及ぼす高温で継続的な加熱は不可能であると断定される。

実証翌日に医療機関で測定した体重証明書

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