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総 括

1 被告人は犯行現場にたどり着けないという事実
 事実認定として現場発生した火災は自然発火の可能性を否定し、第三者犯行説を否定している。そして現場に行ける人物は被告人以外には有り得ないとして判決の主筋としうている。
 然しながら我々の現場を忠実に再現した実証においては、大柄な被告人が犯行現場見たどり着くことは物理的に不可能であると判明した。本来であれば検察側でこの立証をしなければ全ての可能性を否定することは不可能であるにも関わらず、証人の証言偏重による立証に終始し、それをなんら懐疑的な見方なく事実認定をした裁判所の怠慢が如実に誤判決を導いたと言わざるを得ない。
​2 敷梁(北面)は火元とはなり得ない事実
 消防士渡邉証言にある、激しく焼損している場所、そして炎は情報に延焼するという観点から敷梁北面付近を火元と断定した。その際に、合板パネルに設置されていた浴室関連機器からの出火は待機電力状態であること、延焼経路からも否定をした。
 ところが我々の実証によればいかなる方法、物質による加熱においても敷梁が燃焼して、そこを火元として情報に延焼することは確認されなかった。
 渡邉証人の経験則による証言は、いわゆる教科書に書かれている一般常識を述べているに過ぎず、現場での現象には当てはまらない事が明らかとなった。そもそも被告人は犯行現場とされる105号室天井裏、浴室関連機器設置場所に到達できないのであるから、同証人は被告人の犯行であるとの色眼鏡で証言をしていると言える。
​3 短絡及びトラッキングによる電気的火災は否定されない
 当初、警察及び消防ともに現場か電気配線における短絡(溶融)痕を発見できず、これをもって電気的火災は否定されていた。ところが後に現場から焼け焦げた電気配線を撤去した電機業者から配線を領置して、これをNite(独立行政法人製品評価技術基盤機構)そして科警研に鑑定を依頼した。どちらも短絡痕が1次痕なのか2次痕なのかは判断が出来ないとした鑑定結果を示した。
 訴因変更後の担当正検事Kは電気工事士の証言を導くことにより、ブレーカーが正常に動作してたこと、短絡痕が発見された電気配線には、自動精算機が待機電力状態でつながっていた事、これをもって短絡火災を否定させた。また同電気工事士はトラッキング現象における火災においてもブレーカーが存在する事から、これも否定した。
 我々は同電気工事士が現場畑で、ブレーカーに対する技術的見識に欠けている事を証明するために、同証人と同じ有資格者である第1種電気工事士Tを証人申請をして、T証人の証言を裏付けるべくJIS規格の資料、及びブレーカーが存在しても短絡火災そしてトラッキング火災が発生することを収めた証拠を採用するように裁判所に求めた。
 ところが裁判所は我々が用意した弁護側証拠を全て棄却し、検察の筋書き通りの事実認定をしたのである。我々は客観的、科学的根拠に基づいた証拠を申請したにも関わらず、技術的な見識を欠いた電気工事士の証言を丸々採用するという、被告人有罪ありきの訴訟指揮に終始していた。
​4 延焼経路の事実誤認
 火元、延焼経路については消防士渡邉証人の証言が全て採用され事実認定されている。これまでの実証により敷梁は火元となりえない、そしてトラッキング現象により浴室関連機器からの発火の可能性も突き止めた。
 実際に現場と同じ環境下でどのような現象が起きるのかを実証したところ、浴室関連機器が事件当日を同じように待機電力状態で、Niteで報告されている昆虫の尿に見立てたアンモニア水溶液をコントロールボックスに塗布したところ、発火、延焼、そして自然鎮火に至るまで現場と全く同じ状況となった。
 消防士渡邉証人は浴室関連機器から出火した場合、炎は上方に上がっていくのでその直下にある敷梁が強く焼損することは合理的にあり得ないと証言をしていたが、コントロールボックスは樹脂製であるがために熱変形、脱落をして敷梁横で燃焼をし続け、2次的に上方合板パネルや他のボックスに延焼し、炎は合板パネルを燃やし繋いながら上方へ燃え広がっていく様子が記録されている。
 つまり現場を再現した燃焼実証は我々しか行っておらず、消防士は経験則による憶測から延焼経路を導いたわけだが、事件現場にあっては同証言は全く的外れな内容であることが証明された。
 また当初同証人は火災報告書において、火災現場近くの天井ボードのこぶし大の局所的な炭化は火災による堆積物が燻燃する事により同現象が起きた結論づけていたところ、訴因変更前の正検事Kに呼び出された聴取の時になって、この現象は人為的に長時間高温の加熱がなされたと証言を変節させた。
 然しながら我々の現場再現燃焼実証において、天井ボードは火災熱で局所的な炭化が確認され、消化用にかけた水によりこぶし大の穴が空き、全て火災現場と寸分違わず同じ状況が再現された。従って消防士渡邉証人の証言や火災報告書の信ぴょう性を疑うべきである。
5 物質特定のずさんな捜査
 現場からはガソリンや灯油といった石油系の物質、その他助燃剤に至るまで見分、検知されていない。然しながら消防士渡邉証人、鑑識係酒井証人ともにアルコール系着火剤であれば痕跡を残さず火を放つことは可能であると証言をしている。
 然しながら我々の集めた資料によれば、事件発生の相当前から北側式ガス検知管やガス・クロマトグラフといった科学的な検知方法が既に確立されている。それにも関わらず警察、消防ともにこれらの捜査や調査を怠っており、現場の残焼物すら押収していない始末である。
​ 裁判所に至っては、実行行為を「何らかの方法」とだけ言及して、使用されたとされる物質の特定すら行わずに判決を導くという出鱈目な訴訟指揮に終始している最たる部分である。
6 消防士の意図的な偽証
 消防士渡邉証人は自身が作成に主体となった火災報告書において、火災現場近くの天井ボードのこぶし大の局所的な炭化は火災による堆積物が燻燃する事により同現象が起きた結論づけていた。ところが訴因変更前の正検事Kに呼び出された聴取の時になって、同報告書を作成後に同現象に疑問を抱き、消防本部訓練棟でアルコール系着火剤で30分、ガスバーナーで10分天井ボードを加熱して、その後に水をかけたら簡単に穴が空いたとして、火災現場での現象は人為的に高温で長時間加熱させることによるものだと報告書の内容と全く違う内容の調書を取り、証言でも同様の内容を語った。
 渡邉証人が語った証言内容は、科捜研が行った実験により再現されないことは既に証明されている。しか同承証人が訓練棟で行ったとされる実験の様子は結局一度も開示されることなく、情報公開請求による開示を求めても、その情報は存在しないとの回答しか得られない。
​ それにも関わらず裁判所は物的な証拠を開示することのない同証人の証言を採用したのである。我々が同証人の証言に沿って行った実証では、全く再現性はな同証人が正検事Kの意向に沿って証言を変節させたとしか思えないのである。
7 客室ドアの開閉記録のトリック
 従業員S証人当初、事件発生前に105号室の利用客が退室した後に簡易的な清掃の為に、従業員用通路から同室に入り、その後客室ドアを閉めてフロントに戻った証言をしていた。ところが反対尋問において管理システムに「ドアクローズ」の記録がないことを指摘したところ、「客室ドアが半開きだったかもしれない」と証言をした。
 なぜこの証言が重要かというと同システムは客室ドアが完全に閉まっている状態からドアを開けた場合しか「ドアオープン」の記録が残らないという特性があり、仮に客室ドアが半開きや完全に閉まりきっていない状態で開けた場合には「ドアオープン」が記録されず、よっ第三者犯行説を否定することに躍起になっている検察にとっては不都合な証言となるのである。
​ そこで訴因変更前に正検事KはS証人を呼び出し、この部分について再度質問をしたのであるが、S証人は正検事Kからの誘導にあったのか、「客室ドアは完全に閉めてからでた。上司からもそのように教育をされている」と重要な部分の証言を大きく変えたのである。
 またホテルオーナーH証人に至っても、反対尋問において同客室ドアのセンサーは磁気式を使っていないと事実に反する証言もしていた。検察、被害者らもこのセンサーやシステムに固執していると感じた。
 そこで我々はドアセンサーの仕組みを解析して、管理システムに記録を残さずに客室ドアを開閉する方法を明らかにした。これによる何人でもシステムに感知されることなく直接105号室に侵入することは可能であることが判明した。
8 従業員U、ホテルオーナーHの偽証の疑い
 第三者犯行説を否定する為に、検察、被害者ともに躍起になっていると我々は感じていた。特に従業員U、ホテルオーナーHの偽証の疑いは露骨であった。鑑識係酒井証言、そして捜査資料によって彼らの偽証の疑いを暴いたのである。気象観測データはあくまでも偽証の疑いを立証するための裏付けでしかないが、裁判所はこれらの弁護側証拠申請を全て棄却して、完全に偽証の疑いが懸念される彼らの証言を全て採用して第三者犯行説を否定したのである。
 付記するに裁判所は被害関係者が自らの建物に火を放つわけがない、と言及をしているが平成21年秋には自称「ニンニク事件」を起こし、被告人を嵌めようとした事も否定できない状況になり、目的のためなら手段は選ばない事は他の事件においても重々に承知している。
 そもそも被害者は何ら偽証を重ねる必要性もなく、そこには何かしら目的がなければそのような危ない橋を渡るはずもない。
9 明らかな偽装工作
​ ホテルオーナーHは被告人が火災を知らせるためにフロントに架電したことを真っ向から否定している。火災発生当時、従業員S証人は除雪のためフロントを離れ、国道を挟んだ系列店舗の重機置き場に向かっていた。従業員Sは内線電話の子機を携帯しており、客室からの電話はそれで対応すると証言をし、仮に電話に出れなくても着信履歴が残り、事件当時は被告人がかけてきたという103号室からの着信履歴はなかったとも語っていた。
 しかし我々は同ホテルが設置している内線電話システムのメーカーであるナカヨ電子に型式、見取り図をもって照会をしたところ、メーカーが保証している見通しの良い状態で100Mを大きく超えていて、また親機の設置されているフロントと重機置き場の間にはビル型の建物が遮蔽物として存在しており、親機と子機関での通信は不可能との回答を得た。
 この事実を証拠として開示したところ、オーナーHは「中継アンテナが存在するので通信が途切れる訳はない、そして中越地震が発生したあとに国道向かいの店舗を買収して、国道を挟んでも子機が親機と通信できるように中継アンテナを設置したので、少なくとも平成17年には設置を終えていると」、と証言をした。
 反対尋問においてどこに設置しているのかと問われた時には、場所はよく分からないとしていたのだが、後日証拠として中継アンテナの設置場所と写真を開示してきた。
 そこで我々はGoogleストリートビューの画像より、オーナーHが平成17年に設置したとされる中継アンテナが、事件発生1ヶ月前の平成24年11月の段階で存在しないことを突き止め、オーナーHが偽証の上、正当化するために後から中継アンテナを設置したことを立証したのである。被告弁護人は被害者オーナーであるHが露骨な偽証を重ね、検察までをも騙しして偽装工作に奔走している状況で公判をこのまま進めることは承服できないと裁判所に強く申し入れた。
 ところが裁判所がとった方針は意外なものだった。仮に被告人がフロントに火災を知らせる内線電話をかけたとしても、犯人が工作をしていることも否定できない。よって被告人がフロントに電話をかけたかどうかは争点ではないとして、検察、弁護側双方の証拠を棄却してオーナーHの偽証と偽装工作もみ消したのである。
 裁判所は何が何でも被告人が嘘をつき、被害者は真実を話しているという方針の曲げたくはないのであろう。訴因変更後、合議制となった裁判は、雛壇センターに陣取る納屋肇裁判長の独壇場であった。合議制とは名ばかりで、終始裁判長主導で訴訟指揮が取られいる。
 付記するに無罪判決を出した裁判官はあとで吊るし上げを食らう。出世は遅れ要職にも就きづらくなる。従って余程の事がない限り無罪判決は出ない。控訴審の植村稔裁判長も出世欲の強い判事である。つまりは無罪判決は端から期待もできない。案の定、これだけの証拠を採用申請しても全て棄却、丸腰では刑事訴訟は戦いようもない。両手両足をもぎ取られた被告人は有罪しか道はないのである。まさしく魔女裁判と言えるのではないか。
 
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