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7 ドアセンサー

【争点】
 ホテル管理システムの機能から、客室ドアが完全に閉状態の時にドアを開けた際に「ドアオープン」がシステムに記録される。つまり半開きの状態でドアを開けても何も記録されない弱点があった。
 火災が発生した105号室天井裏にたどり着くには、103号室点検口から天井裏に上がり、唯一つながりのある105号室天井裏にアクセスする、もしくは105号室裏にある従業員用ドアから105号室に侵入し、同室の点検口から天井裏にアクセスする方法が可能性として存在する。尚、105号室ガレージからのアクセスはガレージにつながるドアがシステムにより施錠されていた事、さらには同ドアの開閉記録が無いことから否定される。
 事件当時、105号室客室ドアの「ドアオープン」の記録が無いことから第三者犯行説を否定するため、同ドアの半開き状態を否定する必要があり、事件当時に居合わせたホテル従業人Sを証人として出廷させた。同S証人は当初こそは事件前、105号室の簡易清掃後には客室ドアを確実に閉めたと証言をしていたのだが、被告弁護人がシステムの記録を見せた上で、記録の矛盾を突いたところS証人は「ドアは完全に閉まりきっていなかったかもしれない」と証言をした。これにより検察の第三者犯行説が否定できなくなった。
 ところが訴因変更後に担当指揮した北村正検事は、S証人を検察庁に呼び出し別のシステムの記録を見せ、証言とは全く別の調書を取った。刑事裁判では異例なことであるが、検事はS証人を再び証人として2度目の出廷をさせて、1回目の証言を覆しS証人は「105号室のドアは確実に閉めた。上司からもそのように教育されているので間違いない」と正反対の証言を正検事により引き出させた。
 やる気を一切見せない裁判長は、この2回目の証言を採用し、初回の証言を抹殺した。
 のちに事件現場となったホテルオーナーH証人は、被告弁護人からの反対尋問において、「客室ドアのセンサーは磁気式ではない」と証言をしたが、これは真っ赤な嘘、偽証である。なぜ被害者がリスクを追って偽証をする必要があるのか?我々はずーっと引っ掛かっていた。
 人が嘘をつくとき、偽証を重ねるときは何らかの理由があるはずである。何かを隠そうとしているのではないかと。
​ そこで我々はドアセンサーの仕組みを調べたところ、とんでもないカラクリを発見した。それを実証を元に解き明かしていく。

ドアセンサー動作実証

1、実証趣旨
 本件火災現場である105号室客室ドアの開閉状況は、本件ホテル管理システムに残された記録及び関由美子証言によって立証がなされている。然しながら同管理システムの記録は厳密に言うとドアの開閉状況を表しているのではなく、同ドアまたはドア枠に取り付けられているセンサーの反応を記録しているに過ぎず、管理システムの記録をもってのみドアの開閉状況を明らかにすることが可能か否かを検証するものである。
 尚、磁気式センサーの構造については添付資料「マグネットセンサーの動作考察」を参照されたい。

 

2、監修 
 第一種電気工事士 田中 信男(新潟県長岡市片田町554)

 

3、実証実施日
 平成28年11月25日及び同26日

 

4、再現セット仕様及び機材
 1)厚み32mmの木製ドア
  ※通常建具に用いるドアの厚みは30mmであることから、それに近い厚みの寸法とした。
 2)上記ドアは現場に則して階段側から押して客室側に開く構造。
  ※客室側にドアを押し開く構造であれば各センサーの動作確認には支障がないことからドアヒンジが左右どちらにあるかは不問。
 3)客室側ドア上部及びドア枠に磁気式(非接触型)センサーを設置。
  ※本件ホテルの客室は全て客室側に磁気式センサーを設置している事による。
 4)階段側ドア上部及びドア枠に機械式(接触型)センサーを設置。
  ※橋本桂一証人は本件火災現場である105号室の客室ドアには磁気式センサーを使用していないと証言をして、機械式である旨を言及していることから、機械式センサーが物理的にドアの閉まる側(現場で言うところの階段側)にしか設置できないことから同所に設置した。
 5)再現セット正面(階段側)に磁気式センサーの動作確認用に黄色ランプを設置。
 6)再現セット正面(階段側)に機械式センサーの動作確認用に青色ランプを設置。
 

マグネットセンサー(リードスイッチ)動作考察

ドアセンサーの動作(反応)実証動画

5、各センサーの動作確認
 1)本再現セットは本件火災現場105号室客室ドアに設置されていたセンサーを各形式における動作(反応)を実証するために小型化して作成したものである。なおドアの厚みは建具標準となる厚み30mmを少し超える32mmで制作してある。
  ※磁気式センサーが階段がと反対の客室側にあることからドアの厚みのみが重要であり、壁の厚みは同再現実証においては不問である。
   またドアノブの位置は左右で違いがあっても、趣旨はセンサーの動作実証であるので、階段側から客室側に押し開ければ良いので、これも不問とする。

 2)(映像0秒~1分5秒)(添付写真①~⑥)再現セットの概要説明。

 3)(映像1分5秒~1分30秒)(添付写真⑦~⑩)
   正常時でのドア開閉時のセンサーの動作(反応)
   ※磁気式、機械式どちらも反応あり。

 4)(映像1分30秒~2分47秒)(添付写真⑪~⑬)
   階段側ドア上部付近に磁石を配置した状態でドアを開閉しても磁気式センサーのみ無反応。

 5)(映像2分47秒~3分28秒)(添付写真⑭~⑮)
   階段側ドア枠上部に設置されている機械式センサーのレバー部を固定した状態でドアを開閉しても機械式センサーのみ無反応。

 6)(映像2分47秒~4分30秒)(添付写真⑯~⑱)
   客室側ドア上部に磁気式センサー、階段側ドア上部に機械式センサー両方があったと仮定した場合でも、従前の通りどちらのセンサーも反応させずにドアの開閉は可能である。

 7)(映像4分30秒~終了)(添付写真⑲~㉓)
   同実証を再現セット上部から撮影。
   磁気式センサーはドアに取り付けられた磁石の有り無しをドア枠のセンサー部で感知している構造となる。つまりセンサー部と磁石を対となり、通常ドア上部に磁石を設置することから、その磁力の及ぶドア枠の位置にセンサーを取り付けることになる。上記の関係性から磁気式センサーは必ずドア面のすぐ近くのドア枠に位置するので、ドアの反対側から他の磁石で影響を及ぼす場合、壁の厚みは不問となりドアの厚みプラスαの距離(本実証ではおおよそ50mm)に配置することで磁気式センサーがあたかもドアが閉まっていると勘違いさせてドアを開けることは可能である事がわかった。
   尚、建具であるドアの厚みは標準で30mmであることから客室側ドアに取り付けられている磁石から30mm以上の距離に外部磁石が存在することで磁気式センサーを誤動作させることは物理的に可能となる。
   尚、後日行った実験では磁気式センサーから60mm以上離れていても影響を及ぼすことが分かった(添付写真㉔)。この磁石は100円ショップ等で安価に購入できるものであり、より強力な磁力を有する磁石を用いればさらにその距離を伸ばせることは言うに及ばない。
 

ドアセンサー動作実証写真

6、総括
  本件火災は人為的な放火と結論づけられている。その中に第三者犯行説を否定する過程で火災現場となった105号室のドアの開閉状況及びそれを示す管理システムの記録、さらには同システムが完全にドア閉状態からでないと「ドアオープン」の記録がされない構造であることから事件発生前に現場に趣いた関由美子証人が、同ドアを完全に閉めたとする証言が採用されて決定づけられた流れがある。
   然しながら本実証により、本件客室ドアがどのような状態であるかに関わらず、ドアに備え付けられている各センサーを反応させることなく105号室客室ドアを自由に開閉できることから、判決にある第三者犯行説を完全に否定できるものではない事が判明した。

  尚、本件火災ホテルへの唯一の侵入口となり得る従業員用出入り口に関わる事実認定に於いて、鶉谷証人及び橋本桂一証人が偽証を行っていることは、警察鑑識係酒井証言及び見分調書記載の現場写真で明らかであることからも事実誤認であることは明白である。
  従って少なくとも第三者犯行説を完全に排除出来るだけの物証や状況証拠は揃っていないことになる。
 

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